シュガーレスキス
「聡彦、私に何か秘密とかないよね?」

 手紙の事は聞かなかったけれど、一応何となく気になったから私は遠まわしに彼の様子を伺った。

「秘密?そりゃあ知られたくない秘密の一つぐらい誰だって持ってるだろ」
「いや、そういう秘密じゃなくて」

 私の言いたい事がいまいち伝わらないみたいだ。

「仕事は普通だし、帰ってからは菜恵としか一緒にいないし……どういう秘密を持つっていうんだよ」

「あそ。ならいいの」

 聡彦の反応を見る限り、何か心配な状態には無いというのが分かった。
 だいたい、聡彦ほど不器用だと浮気も出来ない上に何か変化があったら速攻で表に出そうだ。

 何となく安心して、私は笑顔で皿洗いの続きをした。
 すると、聡彦が意味あり気に近寄ってきて“皿洗いを変わるよ……”なんて、紳士な事を言った。

「菜恵が俺に妬いた事ってあんま無いよなあ」

 いきなりそんな事を言われ、ギクッとなる。

「誰が妬いてるのよ!」
「今言った秘密って、俺が菜恵以外の女にウロウロしてないか心配になったって事だろ?」

 外れてはいないけど、微妙に違う。
 でも、私が焼き持ち妬くのが嬉しいみたいで、聡彦が機嫌よさそうに皿を洗っているから、私はそれでいいやと思って彼の隣で洗い終わった皿をふいた。
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