シュガーレスキス
 色々あったけれど、聡彦の記憶が少しずつ戻ってくれて、二人の関係が戻っていくのを感じてすごく嬉しい。
 こう言ったら私はMなのかと言われそうだけど、聡彦が私をいじめてくれるのが嬉しい。
 前は本気で怒ったりしてたけど、この人の意地悪はちゃんと本心を読めていればかなり可愛い。
 先日なんか、休日の午前中に私が半日寝てしまったせいで聡彦は「菜恵と過ごす時間が減った」という理由でふてくされた。

 どこの子供ですか……。

 確かに毎日仕事が遅い聡彦とゆっくり過ごせる時間は少ない。
 子供が生まれてしまったら、多分もっと話す時間は減るに違いない。
 そういう先の事も考えて、聡彦は思い出をもっと作ろうよって……さりげなくアピールしている。
 アピールの仕方は決してスマートじゃないんだけどね。

 そういうところ……結構好きだよ。

「可愛い」

 ぼんやりソファに座って新聞を読む彼の頭を軽く撫でてやる。

「おい……俺は子供じゃないぞ」

 目線を落としたまま無表情でそう言う。
 これぐらいでは彼は怒らないのを私はもう知ってるから、結構自由に言いたい事を言う。

「子供だよ。体の大きい子供です。これは間違いないから」

 最初の頃は怖くて口応えも出来なかったのに、えらい進歩だな……と自分でも思ったりする。
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