シュガーレスキス
 困った。
 この子は地球は自分を中心に回っていると思うタイプらしい。
 何年かして、自分のそういう部分を反省してくれればいいけど……どうだろう。
 俺の菜恵に対する執着もすごいけれど、俺は菜恵が自分に気持ちが無くなったらこんな風には押せないだろう。
 だって、自分も相手も苦しいだけだろ。

 少し考えて、俺はもう沢村さんのペースに合わせるのを止める事にした。

「悪いけど、沢村さんの恋愛妄想にはもう付き合ってられない」
「え?」

 この冷たい言葉を聞いて、沢村さんは驚いた顔で俺を見た。
 今まで仕事の部下だと思って色々丁寧に接してきたけど、ここまで来るともう突き放すしか方法が分からない。

「君には恋愛感情は全く無いし、菜恵の事を抜いても多分好きになる事は無いと思う」

 こんなにハッキリ言うまで察してくれなかった沢村さんに、俺は心底ガッカリした。
 せっかく真面目で仕事の出来る子を育ててるつもりだったのに、結局色恋が絡んでくると、仕事もめちゃくちゃだ。

 非常階段で泣いてる沢村さんを残して、俺はそのまま仕事に戻った。

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