シュガーレスキス
「やっぱり来て良かったよ。菜恵って見た目より自分ケアがへたくそっぽいし、この台所の感じだと全然自炊してないな。お前何食べて生きてんの?」

 私が弱ってるのをいいことに、悪魔がまた顔を出した。
 意地悪ばっかり言って、それなのに何故かせっせとおかゆとか作ってる。

「おかゆなら食べられそう。卵入れてね」

 私がそう言うと、また聡彦の笑顔が見られた。
 こんなに彼が優しいなら、ずっと病気でいればいいや……なんて思っていた。

 聡彦お手製のおかゆを食べて、何だか心がどんどん温まるのが分かった。
 体はしんどいんだけど、私の口にスプーンを運んでくれる聡彦の存在を感じて、どうしようもなく彼に対する愛情が溢れてしまった。

「聡彦」

 私が食べるのを止めて彼を見上げると、いつもはちっとも動かない彼の目が少し開くのが分かった。

「ありがとう。メールに初めて反抗的な言葉送ったのに、優しくしてくれて……嬉しい」

 そう言って、私は寝た状態で彼の大きな手をそっと握った。
 ちょっとヒンヤリした彼の手の感触は、何だかお父さんに守られてるみたいな安らぎを与えてくれた。
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