シュガーレスキス
「面倒なのに好かれたなー……」
如月が微妙な顔をして俺の話を聞いている。
禁煙してたはずなのに、我慢しきれなくなったのか、もう煙を吐いている。
「ああいうタイプは初めてで、どうしたらいいか分からん。甘くすればどこまでも深入りしてくるし、冷たくすれば被害者面するし……本当にお手上げだ」
俺よりは女経験が豊富そうな如月は、ちょっと対策を考えるよう、顎に手をあてた。
「アドバイスにもならないけど、沢村さんタイプは逃げても無駄だと思う。とことん向き合って、あっちが”もういいや”って思えるほどにならないと、気持ちだけ暴走するから危険だ」
「とことん向き合う」
聞いただけでめんどくさそうな話しだ。
でも、そうしないと菜恵を助けられないとなると、やるしかないだろう……。
「その手の人間は基本的に自分中心だから、後藤さんが悲しむとか、お腹の子に影響があるかもとか……そういう考えは一切働かないのを覚悟した方がいい。俺はもう後藤さんからは手を引いてるから、手助けはここまでにしとく。とにかく舘さんの言動にかかってるって事で、頑張れよ!」
如月の手が勢い良く背中にパンっと当たって、ぐったりしている体に少し刺激が走った。
菜恵の耳に入らないところで、俺は何とか沢村さんの暴走を止めなくてはならない。
その為にも、彼女ともう一度直接対決するしかなさそうだ……。