シュガーレスキス
「おやすみ。タクシーに住所を言って帰れるね?俺は歩いて帰るから」

 一応彼女が乗るべきタクシーだけは拾ってあげ、その後部座席にぼんやりしたまま座った彼女を残し、俺は自分の足でアパートを目指した。

 怒りと悲しみがごちゃごちゃになっていて、落ち着いた状態で菜恵に会う為にはクールダウンする時間が必要だった。

 菜恵……傷ついた心を全く打ち明けずに我慢してたのか。
 君は、お腹の子供と俺と……それに沢村さんの事まで全部一人で抱えてたのか。


 ごめん、今まで気付いてやれなくて……ごめん。


 今後、菜恵の事は俺が全部守る。


 菜恵の心を思って、俺は帰る道すがら情けなくも泣いてしまった。

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