シュガーレスキス
「今日は特別事例だ。こんなん毎日続くと思うなよ?ていうか、今日は何人だった?」
「え?」
聡彦はこんな時にまでルールを崩そうとしない。
照れ隠しなのか、単に変わり者なのか分からないけど、今日は男性の数はカウントしてなかった。
「一人。……一人だよ」
私は今日ちゃんと会話した男性は聡彦だけだった気がしたから、そう答えた。
すると聡彦は何も言わないで、そっと私の顔に唇を近づけて、優しく、ゆっくりと、1回だけキスをした。
「この前の質問だけど。愚問だから答えなかった」
うっとりとしたキスの後、聡彦は私の目を見てそう言った。
「ん?」
「俺の何って言ってただろ。今更、何言い出すのかと思ったよ」
私が飲みの後に言った言葉の事を言ってるみたいだ。
「だって、私から連絡駄目とか。いきなり呼ばれて適当に付き合わされて……とにかくあなたから愛を感じた事がなかったの。だから、悲しかったし、もういいやって思ったんだよ」
そう答えたら、聡彦は一回フッと笑って、呆れたように私の額を軽くチョンッとつついた。
「馬鹿みたいにルール守るから、俺も面白くて色々注文つけたんだ。あれにまともに付き合う菜恵の正直さには、逆に俺が驚かされた」
そう言って笑った彼の笑みは、再び悪魔だった。