シュガーレスキス
 こんな具合に、私達の結婚準備は着々と進められていて、特に私は心配になる事無く毎日を過ごしていた。
 でも、沢村さんの手紙を読んで、さすがに嫌な気分になった。
 私と結婚する事と子供が生まれる事は職場では公に公表したと聡彦は言っていた。
 という事は、そういう事実を理解した上で、沢村さんは聡彦に好意を伝えているのだ。

 まさか、聡彦さえOKなら不倫とか浮気も可という考えの人じゃないよね……。

 必要以上に心配はしていないけれど、私も逃げていないで、沢村さんにもう一度きちんと話した方がいいんだろうか。
 人によっては、障害が多いほど恋心が燃える人もいるって言うし。
 病院に来た時の沢村さんの言葉から察するに、あまり妊娠するという事に対してリアルに考えていない人のようだから、私が何か言っても逆効果なのかもしれないけど。

 会えるかどうか分からなかったけれど、私は散歩の意味も含めて久しぶりに職場へ向かう為にバスに乗った。
 なるべく多く歩く為に、職場の手前で降りてゆっくり木の葉の落ちる並木道を歩いた。

 本当は沢村さんに会うなんて気が進まない。
 出来れば会えなかったっていう結果で納得して、このまま帰った方がいいような気もする。
 ただ、沙紀とかルリちゃんとか……懐かしいメンバーにはちょっと会ってみたい。

 道端に落ちたイチョウの葉を拾い上げたりして、私は会社に近くなる毎に歩調を無意識に緩めた。
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