シュガーレスキス
「舘さんには関係の無い事です。処分なら何でも受けますので」
平然とした顔で彼女はそう言い、他は別に語る事は無いという感じだった。
「どうしちゃったんだよ……君は」
仕事の出来る、真面目な子だった。
演技だけであの顔だったとは思えない。
俺が……何かこの子を変えてしまったんだろうか。
一抹の不安がよぎる。
「好きな人を好きだと思うだけです。私は、そういう恋愛しかできないんです」
冷めた表情はそのままで、彼女は自分の気持ちを完結に答えた。
「相手には守らなければいけない家庭があるという事は何も考えないのか?」
ありきたりな言葉だとは思ったけれど、これは人間の中心にある倫理感だろうと思っ たから、確認の為に言ってみた。
すると、沢村さんは軽く口に笑みを浮かべた。
「舘さんも見かけによらず結構まとも人間なんですね。そういう理屈が人間としては綺麗なんでしょうけど、恋愛ってもっとドロドロしたものだと思いますよ。まあ、不倫は確かに法に触れる犯罪なんだと知ってますけど、それでもこの世から不倫は無くならない……これが真実じゃありませんか?」
多少の反省を見せるかと思っていたら、まったく逆だった。
開き直りというか……完全に自分の理屈を正当化する事だけに固執している。
この人は……一生、俺と菜恵の間にあるような暖かい関係とは無縁に生きていくんだろうか。
そう思ったら、何だか妙に気の毒な子だな……と思えてしまった。
「今回は上司の方が責任をとって減給になるだけで終わるみたいだけれど、君の将来にも関わる深刻な問題なんだ。今後はもう少し社会人としての立場をわきまえて欲しい」
こんな言葉は言ってもむなしいだけだと分かっていたけれど、一応上司として言わなければと思い、最後にそれだけ言った。
平然とした顔で彼女はそう言い、他は別に語る事は無いという感じだった。
「どうしちゃったんだよ……君は」
仕事の出来る、真面目な子だった。
演技だけであの顔だったとは思えない。
俺が……何かこの子を変えてしまったんだろうか。
一抹の不安がよぎる。
「好きな人を好きだと思うだけです。私は、そういう恋愛しかできないんです」
冷めた表情はそのままで、彼女は自分の気持ちを完結に答えた。
「相手には守らなければいけない家庭があるという事は何も考えないのか?」
ありきたりな言葉だとは思ったけれど、これは人間の中心にある倫理感だろうと思っ たから、確認の為に言ってみた。
すると、沢村さんは軽く口に笑みを浮かべた。
「舘さんも見かけによらず結構まとも人間なんですね。そういう理屈が人間としては綺麗なんでしょうけど、恋愛ってもっとドロドロしたものだと思いますよ。まあ、不倫は確かに法に触れる犯罪なんだと知ってますけど、それでもこの世から不倫は無くならない……これが真実じゃありませんか?」
多少の反省を見せるかと思っていたら、まったく逆だった。
開き直りというか……完全に自分の理屈を正当化する事だけに固執している。
この人は……一生、俺と菜恵の間にあるような暖かい関係とは無縁に生きていくんだろうか。
そう思ったら、何だか妙に気の毒な子だな……と思えてしまった。
「今回は上司の方が責任をとって減給になるだけで終わるみたいだけれど、君の将来にも関わる深刻な問題なんだ。今後はもう少し社会人としての立場をわきまえて欲しい」
こんな言葉は言ってもむなしいだけだと分かっていたけれど、一応上司として言わなければと思い、最後にそれだけ言った。