シュガーレスキス
「うまくいったんだ。良かったね」

 健太がDVDを編集しながらそう言う。

 今回はめずらしく私の部屋が集いの場になっている。
 最近仲間の集まりが悪くて、健太と二人きりになる事が多い。

 私は健太に自分の恋愛の行方を話していた。
 ハヤトと同じぐらい聡彦にも愛情を感じてきていたから、私はつい興奮して彼について語ってしまった。

「うん。なんかね、ハヤトがリアルに生きてたらこんな感じかなあっていう人なんだ。ちょっと屈折してるけど、私が思っていたような嫌な奴ではなかった」

 話しながらも、私の手はひっきりなしに動いている。

 今日は、自作の漫画を作成する為に雲形定規を使って細かい背景なんかを描いていた。
 好きなキャラの為なら二次創作もいとわず、仲間うちだけで楽しむ月間雑誌を作っている。
 私は今回ハヤトが病気の恋人を介抱するというコテコテな漫画を描いていた。
 自分の体験した聡彦へのトキメキを何かに残したくて、こういう事をしている。

 つくづくオタクだ。
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