シュガーレスキス
「じゃあ彼の何が好きなの」

 沙紀はまだ突っ込んでくる。
 そうだね、あんな男を好きなのも私はおかしいと思ってる。
 見た目がカッコイイっていうのだけじゃなくて、どうにも惹かれる何かがあるんだ、彼には。
 それは彼に初めて会った時に感じた「直感」とも言える”何か”だった。

「うーん。説明しづらいけど、スタイルかな。身長が高いとかそういう理由じゃなくて、ライフスタイル。こだわり派なんだよ、彼。マックユーザーで、嫌いな人はビルゲイツだって言ってたし。CDとかも自分の気に入ったアーティスト以外聞かないし。まあ、そういう一つにターゲット絞って好きなものを追求する姿が好き……かな。でもそういうのが無くても好きだな、とにかく丸ごと好き」

 私は雑多なものをどんどん取り入れるのが好みで。
 だから心が移りやすい。
 流行に乗りやすくて、無駄だって分かってるのに流行の服をつい買ってしまう。
 それで次の年にはデザインが遅れていて着られなくなる。
 将来はバーゲンに群がるおばちゃんになってる気がするな……。

「そんな頑固おやじみたいな頭で、よく開発にいられるよね」

 沙紀と私は会社の展示館みたいなところで働く受付嬢だから、会社内部の事はあまり詳しく知らない。

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