シュガーレスキス
 私が泣いたのを見て、聡彦も少し我に返ったような表情になった。

「菜恵……」

 名前を呼ばれて、何かまだ声をかけてきそうだったけど、私は差し出された手を強く弾き飛ばした。

「帰って!嘘つき、裏切り者、最低男!!」

 ありったけのひどい言葉を言いながら、私は聡彦をアパートの外に追い出した。

 知らない、知らない。
 あんな勝手な男知るか!

 浮気男め、どんだけ女性をその気にさせてきてるのか知らないけど……私は一応最低限のプライドはあるつもりだ。
 3番目だなんて言われて、それに甘んじてるほど聡彦に夢中なわけじゃない。
 自惚れないでよね!

 心の中で聡彦を思いっきり責め立てて、ドア越しに泣き崩れた。
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