シュガーレスキス
 この人は、普段からまるっきり自然に笑顔を見せる人で、聡彦のゆがみっぷりから考えると、八木さんのストレートさっていうのは比較にならないほどだ。

「私も実は自炊とか不得意なんで、あまり一人暮らしをきちんとしてるとは言えないんです」

 先にイメージは壊してしまった方がいいだろうと思って、私はありのままを言った。
 食堂に並ぶ列の最後尾で立ち止まって、八木さんは私を見てさらに笑顔になった。

「何だか後藤さんって見た目と違って、個性的だよね。内部に面白いものが潜んでるって感じがする」
「そ、そうですか?」

 私のオタク性質がバレてるんだろうか。
 そんな事を思っていたら、背後に背の高い人が立ったせいで、私はその人の影で日差しから隠された。
 チラッと見たら、思いっきり聡彦が真後ろに立っていた。

「!」

 私はぎょっとしながら、何とも挨拶できなくてすぐに前を向き直った。
 今、八木さんと笑顔で話してたのを見られた。

 まあ、もう関係ない人だけど。

 そう思うのに、心臓がバクバクしていて軽く汗が出そうだ。
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