シュガーレスキス
「ごめん……」

 聡彦がそうつぶやいて、さらに強い力で私を抱きしめてくる。

「3番目だなんて、嘘だよ。俺には菜恵しかいない。1番は菜恵だけ」
「……」

 ツンツンツンの聡彦が、初めて私に謝った。
 しかも、相当優しいトーンで私を一番だって言ってくれてる。

「聡彦」

 私は振り返って、正面から彼の肌に直接触れた。
 やっぱり彼の体は全体にひんやりしている。
 男性らしい筋肉質な固い感触。
 この感覚が、どうしても私は彼の包容力に感じてしまって、思わずぎゅっとしがみついてしまった。

 どうやら、自分が言った言葉に落ち込んでた上に、お昼に八木さんと仲良くランチしてるのを目撃してしまった事が、さすがのツン男を打ちのめしたらしい。

「菜恵が別の男といるのを見ただけで理性がぶちきれるんだ。駄目だ……相当重症だ」

 自分の言動がどうも説明つかないみたいで、聡彦は私の肩に顔を埋めてきた。
 まだしっとりと濡れた彼の髪が首筋に当たって、ゾクッと何か甘い感触が体に走った。
< 54 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop