シュガーレスキス
「さっき言ったの本当?私は聡彦のサードカーじゃないの?大事な1台だけの車なの?」

「……ん。俺がそんなに器用に見えるか?」

「ううん。見えなかったから、余計ビックリした」

 思いがけない展開で、聡彦が私を想像以上に深く思ってくれているのが分かった。
 聡彦がこんなに素直になってくれるなんて意外だった。
 どれだけ関係が悪くなっても彼から謝ってくるなんて想像できなかった。
 私が本気で彼との関係を切ろうとしたのが伝わったのかな。

 実際今日こうやって来てくれてなければ、私は聡彦とはどんどん距離をあけるつもりだった。

 でも……彼は来てくれた。

 だから、私はやっぱり聡彦が好きなんだよな……っていう自分の本心を隠しきれなかった。

「聡彦が好き。私もあなたが一番だよ。本当は嫌いになれたら楽なのになあって思うんだけど、私って一度好きになった人を簡単に嫌いになれないタイプみたい」

「菜恵……」

 聡彦の声が微かに震えたのが分かった。
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