シュガーレスキス
■第1章(3話)
3-1 ルール改定
私が聡彦を好きになった理由は、実は本人にも告げていない。
入社してすぐの頃。
食堂に行くには垣根を越えた向こう側に行かなくてはいけなくて、社員証を持っていないとそっちのエリアに入る事が出来ない事になっていた。
でも、この日の私は制服もまだ届いてなくて、普通のスーツ姿だった。
コスチュームを着ていれば通してもらえたのかもしれないけど、社員証を忘れてしまった私は、食堂までの道で足止めをくらっていた。
「社員の証明が無いと通せないんですよ」
警備員の人はシビアだった。
私がいくら資料館の受付だと言っても駄目。
諦めて、資料館にはインスタントラーメンの自動販売機があるから、それでいいやと思って引き返そうとした。
その時、背後で男性の太い声が聞こえた。
「企画の舘ですけど。この人、ちゃんとした社員ですから大丈夫ですよ」
「あ、舘さん。そうなんですか、いや……見かけない人だったんで」
警備員さんの態度がコロッと変わった。
聡彦の迫力に押されたみたいに愛想笑いをして私達を通してくれた。
「ありがとうございます」
「新人?帰りも社員証見せろとか言われたらこれ見せとけよ。もう去年のIDだから使えないけど、チラッと見せるぶんには疑われないだろうから」
私の顔も見ないで、聡彦は私に自分の古い社員証を渡してくれた。
笑顔も見せず、こっちが感謝しようとしても全くとりつくしまが無いという感じで去ってしまった。
入社してすぐの頃。
食堂に行くには垣根を越えた向こう側に行かなくてはいけなくて、社員証を持っていないとそっちのエリアに入る事が出来ない事になっていた。
でも、この日の私は制服もまだ届いてなくて、普通のスーツ姿だった。
コスチュームを着ていれば通してもらえたのかもしれないけど、社員証を忘れてしまった私は、食堂までの道で足止めをくらっていた。
「社員の証明が無いと通せないんですよ」
警備員の人はシビアだった。
私がいくら資料館の受付だと言っても駄目。
諦めて、資料館にはインスタントラーメンの自動販売機があるから、それでいいやと思って引き返そうとした。
その時、背後で男性の太い声が聞こえた。
「企画の舘ですけど。この人、ちゃんとした社員ですから大丈夫ですよ」
「あ、舘さん。そうなんですか、いや……見かけない人だったんで」
警備員さんの態度がコロッと変わった。
聡彦の迫力に押されたみたいに愛想笑いをして私達を通してくれた。
「ありがとうございます」
「新人?帰りも社員証見せろとか言われたらこれ見せとけよ。もう去年のIDだから使えないけど、チラッと見せるぶんには疑われないだろうから」
私の顔も見ないで、聡彦は私に自分の古い社員証を渡してくれた。
笑顔も見せず、こっちが感謝しようとしても全くとりつくしまが無いという感じで去ってしまった。