シュガーレスキス
 次の日の朝になって、私は結局寝不足のまま、まだ寝ている聡彦からそっと離れて朝食の支度をした。
 いつもは適当に食パンだけ食べるんだけど、一応ベーコンエッグを作った。
 卵の焼ける匂いに気がついて、聡彦が目を覚ました。
 自分が一瞬どこにいるのか分からないみたいにきょとんとしていて、次にすぐ昨日の事を思い出したみたいで、起き上がって私を見た。
 朝日を背に彼の体が眩しく光っていた。

「おはよう。シャツ乾いてたよ」

 そう言って、私は彼に下着とTシャツだけ渡した。

「スーツもほとんど乾いてるし、ワイシャツはあとでアイロンかけるね」
「……菜恵」

 起きぬけの聡彦っていうのは初めて見たけど、何だかすごく新鮮だった。
私が手にしていたシャツを受け取って、じっと見ている。
 まだ頭がはっきりしてないのか、いつものシャープな目じゃなくて、ちょっとトロンとした眼差しで、そのままキスをされた。

「ん……」

 一回で終わると思ったキスだったのに、彼はさらに深いキスを重ねて3・4回繰り返した。
 朝から脱力してしまうような強烈な刺激のキス。

 でもこれはバツゲームじゃなくて、本当の愛からしてくれてるキスなんだよね。
 だから私は嬉しくてそのまま黙ってキスを受けた。
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