シュガーレスキス
 インフルエンザで倒れた時だって、こんな感じに優しかった。
 本当の彼はこんなふうに優しいんだよ。普段は何か別の仮面かぶっちゃってるだけなんだ。

 それを私は“直感”で分かっていた。だから好きになった。

「菜恵を失う夢見た。……超怖かった」

 そんな事を言って、聡彦はめずらしく照れたような笑顔を見せた。

「そうなの?私は何で聡彦を好きなのか再確認してたよ」

 彼の体をしっかり抱きしめて、私はシャツだけ着た彼の胸元に頬を寄せた。

 何だかしみじみと、“私は聡彦と付き合ってるんだな”っていうのを感じた。
 トゲトゲした警戒心も無く、悪魔的な空気も無く。
 いつでもこんなだといいのに……。

「すごい腹減った……」

 朝食の匂いに我慢できなくなったみたいで、聡彦がそんな素直な言葉を漏らした。

「全然料理出来ないんだけど、簡単なパン食でいい?」
「ん、何でもいい」

 本当に自然な雰囲気で私達は一緒に朝食をとった。
 それで、聡彦が食器を洗ってくれている間に私は着替えとお化粧をして、さらに聡彦のワイシャツにアイロンをかけた。
 スーツも少しだけよれっとなっていたから、簡単にあて布をしてプレスしてあげた。

 何だか新婚夫婦みたいだなあ。
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