シュガーレスキス
「!」

 そこには、聡彦と企画の一番若くて可愛い子が向かい合って座っていた。
 聡彦はこっちに背中を向けていたから、多分私と八木さんが一緒な事には気付いてない。
 私の心臓がドクドクしている。
 聡彦に限って……女性と1対1で飲むなんて考えられなかった。
 でも、笑顔で何か話している様子を見ると、それなりに楽しい時間を過ごしているみたいだ。

 あれは……聡彦のサインなの?
 もう私の事は忘れてやるって……そういう事なの?

 八木さんと少し親しくしただけで、ここまでツンケンされるなんて……。
 私は猛烈に聡彦に対して腹が立って、そのまま会計をして外に出た。

「待って、待ってよ。怒ったの?でも……後藤さんも今僕と一緒にいるでしょ。彼と条件は同じだよね?」
「……」

 そうだ。その通り。
 私は八木さんと二人きりで飲んでいた。
 だから、聡彦が企画の女性と二人きりで飲んでいても責める資格は無い。

 私……浮気しちゃうよ?
 聡彦、あなたが悪いんだよ。くだらない事でプンプン怒ってさ……。

 私の心はちょっとヤケ気味だった。
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