シュガーレスキス
 私が軽率だった。
 聡彦と喧嘩してて、彼が別の女性と飲んでるのを見て頭にきて……それでこんな展開になっている。
 電話では「浮気したから」なんて言ったけど、実際にそうするつもりなんか無かった。

 どうしよう。

「ひどいね。こういう半端な態度が一番人を傷つけるんだよ」

 そう言って、八木さんは私の首筋に強いキスをした。

「痛っ……」
「跡が残った。ごめん……でも、これで舘さんだって余裕な態度とるわけにいかないのが分かるんじゃない?僕さ……結構しつこいから。覚悟しといて」

 私が半泣きになっているのを見て、八木さんは少し表情を緩めた。

「君を泣かせたい訳じゃないんだよ。でも、泣いてる君も可愛いと思ってしまう。男と女なんて、結局こういう欲を捨てて付き合うなんて無理なんだよ。これからは、たやすく男を部屋に上げるなんて止めた方がいい」

 そう言って私の頭を軽く撫で、八木さんはジャケットを手にとってそのまま部屋を出て行った。
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