シュガーレスキス
 聡彦は私の首をするすると撫でて、痣の部分を何度かこするように指をあてている。

「……別の男に、こんなものを残されたのか」

 やや放心状態という感じで、聡彦はそうつぶやいた。
 怒っているという雰囲気ではなくて、本当に脱力したような声だった。

「1週間っていうのは、これが消えるまでっていう意味だろ?」
「うん……そう」

 私があんまり泣いているから、聡彦も責める気になれないみたいで虚ろな目で私を見ている。
 お互いどう心を近づけていいのか分からなくなった。

 私は聡彦の短気ぶりに腹が立ってた上に企画の女性と一緒にいた事を問い正したいと思っていた。
 聡彦だって、ささいな事で怒った事を多少後悔しているみたいだったし、きっと今日は仲直りしたいと思ってくれていたはずなのだ。

 私が八木さんを部屋に上げさえしなければ、こんな事にはならなかった。

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