あの夏の季節が僕に未来をくれた
結局、俺たちは弟を除いて全員が志望校に受かった。


やはり最初の教科を一問も解けなかったのが原因だと思う。


それでも次の二次募集では、最初から保健室での試験が認められて、別の高校に合格することが出来た。


そんな裏技があったなら、最初からそうさせてやりたかったと無念でならなかったけれど、弟は気にする風もなく自分の運命を素直に受け入れていた。


俺はそんな弟が自慢だったけれど、同時にこいつには敵わないなと思わされる。



いつでも俺の前を眩しく照らすのは弟だ。


同じ姿かたちをしているのに、この違いはなんなんだろう?


同じ卵にオタマジャクシが二匹着床した時……


負の要素は全部自分に来てしまったような気がしてならない。


それを相殺するために弟が病気なんだとしたら、俺は生まれてこなければ良かった。


あいつを支えるしっかり者の兄という役割がなければ何も残らない俺なんか……



病気と引き換えにいなくなってしまったって構わないのに。


そんな態度は誰にも見せちゃいなかったけれど、勘のいいあいつは気づいてたのかな?


< 10 / 248 >

この作品をシェア

pagetop