あの夏の季節が僕に未来をくれた
母は……あの口ぶりからするときちんと考えてくれているのかもしれない。


だけど父はどうなんだろう?


弟のために必死に時間を作って向き合ってた父を俺は知っている。


それだけに弟に死なれて一番ショックを受けたのは父だったのかもしれない。


しばらく塞ぎこんで食事も取らず、会社も休んでいたみたいだった。


四十九日が終わって、ようやく気持ちに区切りがついたのか、会社に行くようになったけれど。


今度は弟を忘れるためなのかと思うくらい、仕事漬けになった。


「そうそう、それでね?お父さん!

雅紀が、そろそろ進路について話したいみたいなのよ」


母がまず口火を切ってくれた。


自分から話しかけるのが正直怖かったのもあったから、それはそれで助かった。


「そうか、もうそんな時期なんだな?

で、どうなんだ?

どっちにすんだ?」


どっちというのは、就職にするのか進学にするのかといった意味だろう。


俺はコクリと唾を呑み込むと、おもむろに口を開いた。


「進学……したいんだ」


やっと出た言葉は掠れて小さなものだったけど、両親の耳にはきちんと届いたようだった。


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