あの夏の季節が僕に未来をくれた
「あら、進学するのね?
お母さん、応援するから頑張ってね?」


母が嬉しそうにそう言った。


俺も嬉しくて思わず笑みをこぼしながら、小さく頷く。


ありがとうなんて照れ臭くて言えなかったけれど。


でもきっとそれだけで母には通じたはずだ。


その証拠に母もまたにっこりと頷いてくれる。


今朝感じた、俺に向けられた眼差しは見間違いじゃなかったんだと。


俺は嬉しくてやっとこの家族の一員になったような気がしていた。


それから今度は父の言葉を待つ。


どんな返事が来るのか雅紀は期待に胸を膨らませた。


これをきっかけにして、父にいろいろ相談できたら……


そんな風に思っていたから。


そう、思っていたのに……


「そうか、頑張れよ?」


「……」


父が放った一言は、俺の胸に突き刺さる。


俺のことになんか興味がないような……


好きにすればいい、金なら出してやるから……みたいなニュアンスに絶句する。


同じように頑張れと応援してくれた母とはまったく違う。


どうでもいいような返答に、俺はそのあと料理の味なんかわからなかった。


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