あの夏の季節が僕に未来をくれた
どんな学校に行きたいんだ?


将来の夢はあるのか?


アドバイス出来ることならするからいつでも聞いてこいよ?


そんな言葉が聞けると思っていた俺は、なんてバカなんだろう。


期待して裏切られて、今までだってその繰り返しで。


だからもう期待なんかしないって決めてたはずなのに。


ハハッ、笑える。


いつだって弟中心だったこの人に、期待するだけ無駄だった。


弟がいなくなって、もしかしたらって……


だけどやっぱり父の中にいるのはあいつなんだ。


「ごちそうさま……」


俺は無理矢理、自分の分の夕食を口に詰め込んで、そう言って席を立った。


そうでもしないと泣きそうだったから……


こんな父のために泣いてなんかやらない。


父の言葉に傷ついただなんて、知られたくなかった。


部屋に戻る途中で、「雅紀!」という母の声が聞こえたけれど、振り返らなかった。


父にたしなめるような口振りで何か言ってるのも聞こえたけど。


もうどうでもよかった。


(俺の気持ちなんて父さんにはわからないんだ!)


そしてまた俺は開きかけた心のシャッターを、固く閉ざしてしっかりと鍵をかけた。


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