あの夏の季節が僕に未来をくれた



ハァ……


溜め息しか出ない。


せっかく俺がお膳立てしてうまくいくと思われた進路の話し合いは、はっきりいって失敗に終わった。


まさか父さんがあんなにそっけないなんて……


(だけどそれにしたって兄貴は傷つきすぎなんだよ!)


あんなの、もっと自分から話しかけりゃ父さんの返事も変わったかもしれないのに。


父さんだって人間だ。


久々に兄貴と会話するんから、照れたりすることだってある。


(もしかしたら父さんだって、兄貴と同じように緊張していたのかもしれないじゃないか!)


以前にもまして兄貴の防御は固くなってしまった。


ちょっとやそっとじゃもう父との距離は縮まないかもしれない。


あれから母もかなり気落ちしている。


自分が話し合いを持とうと言い出したのだから、当然といえば当然なんだけれど。


一度は明るくなりかけた家の空気は、もう見る影もない。


ただ、挨拶だけを交わすだけの毎日。


当然、父は早く出掛けて遅く帰宅するわけだから、その空気は必然的に母と兄貴のものだ。


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