あの夏の季節が僕に未来をくれた
(時間がないっていうのに、いったいどうしたらいいんだ……)


俺は仕方なく佐伯の力を借りることにした。


そうはいっても、学校で寝ることなんてめったにないわけで。


こないだのあれはかなり貴重な偶然だ。


だけど今、兄貴の心を開けるとしたら佐伯くらいしか見当たらない。


悩んだあげく、俺はまた兄貴が寝静まった後、体を借りた。


ベッドから起き上がると、机の上で充電している携帯電話に手を伸ばす。


それから電話帳を開くと佐伯の番号を呼び出した。


まだ10時だから、ギリギリ起きてるかもしれない。


トゥルルルル……トゥルルルル……トゥルルルル……トゥルルルル……


相手はなかなか出てくれない。


(くそっ!もう寝ちまったのか?)


そう思って諦めようとしたその時、携帯の向こうから声が聞こえた。


「もしもし、青木?

珍しいな……お前が電話くれるなんて

しかもこんな時間に」


かけた相手が雅紀であることは、登録していてわかったのだろう。


佐伯はすぐに兄貴の名前を呼ぶと、そう驚いたように話す。


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