あの夏の季節が僕に未来をくれた
まさか……
こんなにうまくいくとは思わなかった。
兄貴はあっという間に佐伯に心を開いて。
父のことも受け入れようとしていた。
もしかしたら……
俺なんかが余計なことしなくても。
兄貴は普通に佐伯に相談していたのかもしれない。
俺が思ってるよりもはるかに、佐伯は兄貴を信頼していたし。
兄貴は佐伯を必要としていたようだ。
(良かった……)
嬉しくもあり寂しくもある複雑な気持ちをもて余しながら。
それでも俺は心の底からそう思えたんだ。
俺が生きていたって、与えてやれなかった安心感や充実感を。
佐伯はいとも簡単に兄貴に与えてやることが出来てる。
わかっていたけど……
兄貴にとって、俺は邪魔者だったのかもしれないと今更ながらに思った。
双子に生まれたからには、以心伝心は当たり前なんだと勝手に思っていたけど。
兄貴も俺も以心伝心どころか、相手の気持ちを量りかねてたような気がする。
それはきっと俺の病気がそうさせたんだろう。
普通の健康な二人だったなら、今の佐伯と兄貴みたいに何でも相談しあえたんだろうか?