あの夏の季節が僕に未来をくれた
普通に好きな子の話だったり、将来の話だったり、時には悩みなんかも……


俺は病気という存在に怯えていたし、兄貴は俺という存在に遠慮してた。


あの初めて発作が起きたあの日から。


俺たちの関係は対等じゃなくなった。


本当はもっともっといろんな話がしたかったのに……


兄貴は俺に嫉妬しながらも、いつも心配するばっかりで。


俺には心を開いてくれなかったから……


そう、ちょうど今みたいに俺の声に耳を傾けようとしない頑なな態度のように。


俺は兄貴が好きだったんだな……と思う。


だから今、自分がそう仕向けたくせに、佐伯に嫉妬してる。


だからって兄貴が佐伯と仲良くなったことを後悔なんかしてないけど。


たぶん、こんな関係を本当は俺が作りたかったんだ。


だからこれはただ羨ましいだけ。


兄貴にこんな顔をさせることが出来る佐伯にヤキモチ妬いてるだけ。


俺にはずっとシャッターを閉めたまま開けてくれない兄貴への恨めしい気持ちだけなんだ。


佐伯はあの夜の電話のことを兄貴には話さなかった。


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