あの夏の季節が僕に未来をくれた
初めて過呼吸になったのは、確か小学校の高学年くらいだったと思う。
なぜそんな発作が起きたのかは未だにわからない。
学校の遠足で動物園に行ったときのことだった。
電車で向かう車内で、さっきまで同級生たちとふざけていたというのに。
動物園の入口を通り、たくさんの人混みに囲まれた時、急にそれはやって来た。
ヒューヒューと喉がなり、息苦しくなる。
きっと顔は真っ青だったに違いない。
しだいに指の先や口の辺りが痺れるように感じて怖くなる。
このまま死んでしまうんじゃないかという恐ろしさでパニックになった。
目眩と吐き気に襲われ立っていられなくなる。
人混みの行き交う人たちが、スローモーションのように見える中、俺の体はゆっくりと膝から崩れていったんだ。
朦朧とする意識の中で、俺の名前を呼ぶ声がいくつも聞こえた。
たぶん女子なんかは悲鳴をあげていたような気がする。
誰かが人混みを掻き分けて駆け寄って来るのをぼんやりとした視界の端に捉えた。
必死の形相で近づいてくるその人は、自分と同じ顔をして心配そうに俺を覗きこんだ。