あの夏の季節が僕に未来をくれた
それは妹という立場と双子の兄貴という立場の違いかもしれない。


妹は佐伯のことを大好きだったし、それがこちらにも伝わるくらい全身で表現してた。


それは中学生の女の子だからそうなのかもしれない。


俺だって兄貴が好きだったけど、同じ男で兄貴って言っても歳は同じわけで。


佐伯の妹みたいには「大好き、お兄ちゃん!」なんて言えるわけもなくて……


同じ双子でも、俺が女の子だったら良かったのかもしれないなんて、佐伯の妹を見ていて思ったんだ。


兄貴は佐伯の家族に触れながら、自分の家族を振り返ったのかもしれない。


同じ病気の子供を持つ親であるのに、何故こんなにも違うのだろうと。


母は優しかったけれど、どこか父に遠慮がちだった。


父は一見亭主関白のようだけれど、精神的に弱い人だ。


そして兄貴はしっかりしているように見えて寂しがりやでもある。


それは全部俺のせい。


俺の病気がそうさせた。


あの発作が起きる前の、まだ俺が小さかった頃は、今の佐伯の家とそう変わらなかった。


笑顔に溢れるごく当たり前の幸せな家族だったのに。俺が病気になったことで、母は自分のせいだと思うようになった。


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