あの夏の季節が僕に未来をくれた
そんなの関係ないのに、自分の育て方が悪かったんだと。


だから父の顔色を窺うように、遠慮がちになっていったんだ。


父は俺が精神的な病気だと知ってから、一生懸命接してくれるようになった。


だけど精神的というだけに、言葉には気を付けなきゃいけないと思ったんだろう。


以前は当たり前のように叱ったり諭したりしてくれていたのに、それからはそれがなくなった。


誉めることばかりになり、俺のしたいようにさせてくれるようになった。


それを当たり前のように思ってわがままになるほど、俺はバカじゃなかったけれど。


でもそれは兄貴がいたからそう出来たのかもしれない。


そして兄貴は……


自分が相手にされていないことを寂しく思いながら、俺を心配することでしっかりしたイメージを親に植え付けた。


なんとかして自分の存在を確立させるために……


いろんなそれぞれの思いは交錯することなく、俺が死んだことで呆気なくバラバラになってしまった。


きっと俺が生きていた頃から、危ういバランスで保っていたのだろう。


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