あの夏の季節が僕に未来をくれた
けれど佐伯の家族はバラバラになるどころか、固い絆で結ばれているように見えた。


兄貴はきっと羨ましかったに違いない。


だけど何度も遊びに行くうちに、それが家族全員の努力の上に成り立っていることに気付く。


佐伯も妹もお母さんもお父さんも、常に本音で言いたいことを言い合う。


それが佐伯家のルールだった。


「時にはぶつかることもあるけどな?」


そう佐伯は言っていた。


だけど兄貴みたいに自分の感情を押し殺して、父の気持ちがわからないなんてことはないんだと。


「だから、お前もちゃんと自分の気持ち伝えてみろよ?」


そう兄貴の背中を押してくれる。


「言わないで悩むくらいなら言って悩んだ方がよっぽどいいぜ?」


そう笑いながら言った佐伯の言葉を、兄貴は真摯に受け止めたんだと思う。


最初はぎこちなかった父との会話も、最近ではだいぶ自然になってきた。


それを見て母は嬉しそうに笑い、父も息子と久しぶりに交わす会話を楽しんでるように見えた。


あの中に、俺がいないことは寂しいけれど、少しずつ修復していく家族の姿を見るのは嫌じゃない。


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