あの夏の季節が僕に未来をくれた
「それでさ、佐伯って友達がいるんだけど、医者を目指してて、頑張ってんだよね」
「医者か、すごいな?」
「でしょ?
ちょっと尊敬してんだよね?
自分の夢とかちゃんと持ってるってすごいよね?」
「まあな、でもゆっくり考えても遅くないから、お前は焦んないでもいいんだからな?」
「わかってるよ
でも、ありがとう」
数週間前には考えられなかった父との会話。
ありがとうなんてさらっと言えちゃうほど、俺と父の距離は縮まっていた。
「今度、佐伯くんだっけ?
うちにも連れていらっしゃいよ
お母さんも会ってみたいし」
「あぁ、うん……
そのうちね?」
「そんなこといって
こないだもそう言ってたじゃない
向こうのお宅にはよくお邪魔してるんでしょ?」
「うん、まあね……」
母は最近、佐伯を連れてこいってうるさいくらいに言ってくる。
きっと俺の話に出てくる唯一の友人だから、興味があるのかもしれない。
だけど、俺は佐伯を家に連れてくることに、どうしても抵抗があった。