あの夏の季節が僕に未来をくれた
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、最近親との会話に違和感を覚える。


いろんな話をするようになって、少しずつ距離は縮まっているのに、それは日に日に高まっていく。


その違和感が何なのか、最初はわからなかったけれど。


母が佐伯を連れてこいと言うたびに。


佐伯に弟のことを知られたくないと思った時点で気がついた。


母も父も一度も弟のことに触れていないということに。


思い出話も、あいつの名前さえも、一切口にしていないのだ。


仏壇に備える線香やお供えは欠かさないけれど。


それを俺にやらせることも、強要することもない。


母が毎朝、毎昼、毎夕、黙々と水を変えたり、ご飯を供えたり、線香をあげたりするだけだ。


それが何となく居心地が悪くて、それを見るたびそこから目を逸らした。


同じように父も仏壇には近寄らない。


弟の存在は無かったように振る舞い、俺に接してくる。


それを見ながら父もまた、俺と同じようにあいつへの複雑な思いを抱えているんだと。


逆に気づいてしまったんだ……


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