あの夏の季節が僕に未来をくれた
夏休みに入り、兄貴は学校に行くことも少なくなった。
それは同時に、すみれちゃんに会えるチャンスがますます減ったということになる。
兄貴は相変わらずだし、時間はないし。
俺は途方に暮れた。
本当はあまり多用するのは良くないことだとわかってる。
だけど今は緊急事態だ!
やっぱり最終手段に出るしかない。
すみれちゃんは部活動の生徒がいる間、夏休み中も保健室にいるらしいことだけは調べがついている。
あとはその時間帯を狙って会いに行くだけだ。
もちろん、兄貴の体を借りて。
当日の朝――
兄貴がまだ起き出す前に、俺は兄貴の体を乗っ取った。
(ごめん!兄貴、これで最後にするから!)
心の中でそう謝りながら、ゆっくりと体を起こす。
もう四度目ともなると、違和感もなくなってくる。
だけど、逆にそれは怖いことで、兄貴の体だということを忘れそうになって俺自身が出てしまうのだ。
あの日の夜、母の前でも失態は経験してる。
もしかしたら母は気付いているのかもしれない。