あの夏の季節が僕に未来をくれた
だからこそ、今度はきっちり兄貴に成り済まして、すみれちゃんに俺からのメッセージを伝えるんだ。


パジャマがわりのTシャツと短パンを脱ぎ捨てて、制服に身を包む。


当然この制服を自分で着るのは初めてなわけで。


自分の落ちた高校の制服を着るのは、少しだけ気恥ずかしかった。


携帯と財布と自転車の鍵をポケットに突っ込んで、リビングへと向かう。


そこには出勤前の父と、朝食を作る母の姿があった。


懐かしい、この感じ。


俺が生きていて、まだ学校に行けてた頃は、こうして後からおはようって声をかけて一緒に朝食をとっていた。


兄貴はこの時間はすでに部活の朝練に出掛けていたから。


この三人で過ごす朝は、その頃の定番だったと言えるだろう。


「おはよう」


そう声をかけると、父が驚いたように振り返った。


最近は兄貴も部活がなくなり、一緒に朝食をとることも多くなったから、不自然ではないはずだ。


ドキドキするのを悟られないように、いつもと変わらぬ様子で兄貴の席につく。


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