あの夏の季節が僕に未来をくれた
「あら?今日は学校なの?」


夏休みだというのに制服で、しかもこんなに朝早く起きてきたことに、母は驚いたようだった。


「あぁ……うん、そうなんだ

ちょっと先生に聞きたいことあってさ

進路のことで……」


「そう、大変ね?

朝御飯は?食べていくでしょ?」


母親という生き物はどんな時でもご飯の心配をするものなんだなと、俺は可笑しくなる。


「うん、食べてくよ」


久々に味わえる母の料理。


いつの間にかニヤついていたのかもしれない。


ご飯をよそった茶碗を俺に渡しながら、母がつられたように笑った。


それを見て今度は父が俺の方に顔を向けて、何か言いたそうに見つめてくる。


「何?どしたの?」


そう言って見つめ返すと、父は疑うような目で俺を見た。


「いや、なんでもない」


腑に落ちないようにそう言った父は、また顔を前に戻して漬け物に手を伸ばした。


うちの朝食は和食が定番で、俺は母の味噌汁とだし巻き玉子が好きだったことを思い出す。


ふと見渡すと、だし巻き玉子が見当たらない。


珍しいな……


いつも必ず作ってくれてたのに。


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