あの夏の季節が僕に未来をくれた
「すみれちゃんには感謝してる……

病気のこともすみれちゃんがいてくれたから、辛くなかった……

だから、すみれちゃんのせいじゃない

俺が弱かっただけなんだ

……ごめんね?」


一旦治まったかに見えた彼女の表情が、みるみる歪んで嗚咽に変わる。


「……謝ら…ないで……
ヒック……私が……ウッウッ……
心残りなの……」


「だから、そんな風に思う必要ないんだって!

俺のことは忘れて、また新しい恋しなよ?ねっ?」


「だって!……こんなことになるなら……ウッウッ……成人するまでなんて……ヒック……言わなきゃ良かった!」


きっと彼女なりにいろいろ考えてくれてたんだろう。


こんなに早くいなくなってしまうなら、全てを捧げれば良かったと。


でもそれは違う。


いなくなるからこそ、俺は深い関係にならなくて良かったと今、思ってるんだ。


だって、触れた唇を思い出すだけで、こんなにも切ない。


彼女だって、もしそんなことになってれば、余計に俺への思いが募るかもしれない。


だから、これで良かったんだ。


「俺はすみれちゃんに会えただけで幸せだったよ?

もしすみれちゃんに会ってなかったら、もっと早く死んでたかもしれない」


< 157 / 248 >

この作品をシェア

pagetop