あの夏の季節が僕に未来をくれた
「そんなことない!

きっと……私に会ってなくたって……ヒック……結果が同じなら……ウッ…意味ないよ!」


すみれちゃんの言葉が胸に突き刺さる。


確かにそうなのかもしれない。


どうせ死んじゃうなら、会おうが会うまいが関係ないと思われても仕方がない。


だけど……


「すみれちゃんにとってはそうかもしれないけど!

俺にとっては……

ずっと病気のことでいろんな人に気を遣って生きてきた俺には

すみれちゃんが素直に自分を出せた初めての人だったんだ……

人を真剣に本気で愛することが出来ただけでも、生きてた意味があるんじゃないかって……」


そう言いながら、俺は初めて死んだことを後悔した。


いくらすみれちゃんへの思いを語ったところで、死んでしまえば意味がないんだ。


父や母や兄貴には感じたことのなかった後悔の念が俺を襲う。


そうだよな?


そう思うならなぜ……


彼女を置いたまま死んだりしたんだろう?


「……ごめん」


もうそれしか伝える言葉が見つからない。


< 158 / 248 >

この作品をシェア

pagetop