あの夏の季節が僕に未来をくれた
自分がすみれちゃんにどんな仕打ちをしたのかを、改めて認識してしまったから。


逆の立場なら……


忘れろって言われたって忘れられるわけないよな?


「でも……すみれちゃんには幸せになってほしい……

俺の分まで……

だからお願い……いつまでも俺のこと引きずらないで?」


彼女は唇を震わせながら、切なそうに俺を見た。


それから一言。


「……わかった」


すみれちゃんはそう答えた。


自分からお願いしたくせに、彼女が俺を忘れるって了承したことが、苦しかった。


だけどそれは俺への罰。


すみれちゃんを残して死んだことへの戒めなんだと、それを受け入れる。


「じゃあ、俺……行くね?

兄貴に体、返さなきゃいけないし……

すみれちゃん……幸せになってね?」


大好きだよ……


涙が出そうになるのを堪えて、その場を立ち去ろうとした。


伝えたいことは全部伝えた。


俺なんかに縛られずに、たくさん恋して幸せになってほしい。


保健室のドアを開けようとした時。


背中に何かがぶつかった。


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