あの夏の季節が僕に未来をくれた
振り向くと、俺の足元にノートが落ちていた。


投げられただろう先を見ると、すみれちゃんが怒ったように俺を睨み付けてる。


「……え?」


「バカ!なんで勝手に言いたいことだけ言って、また私の前から消えようとするのよ!

なんで……

最後くらい抱き締めてくれたっていいじゃない!

あなたと私は惹かれあってたけど、会ったのなんて数えるほどしかないのに……

最後の方は声だけしか聞けなかった……

あなたがいなくなるのわかってたら!

もっともっと会いたかった!

触れたかった!

せっかく諦めようって思ってたのに、また現れて私の心をかき乱して!

忘れてですって?

だったらなんで会いに来たのよ!」


返す言葉も見つからなかった。


俺は俺の自己満足のために、彼女に会いに来たんだと、たった今思い知らされた。


悲しみは深くたって、時間が解決してくれる。


それなのに、思い出にしようとしてる最中に、リアルな存在が目の前に現れたら。


思い出になんか……ならないじゃないか!


忘れてなんてカッコいいこと言ったけど、俺は最後にすみれちゃんと話したかっただけだったんだ。


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