あの夏の季節が僕に未来をくれた
兄貴の体まで借りて、マヌケにも程がある。


「ごめん、すみれちゃんの言う通りだよ……

会いに来るべきじゃなかった……」


「そうじゃない!

最後に……ちゃんと思い出にするから……

だから……抱き締めて欲しいだけなの」


「……っ!」


「ねっ?いいでしょ?

私たちちゃんと触れあえたのなんてあの保健室での一度きりなんだよ?

私は……あなたに触れて欲しい」


「それは……出来ない」


「どう…して?」


「これは兄貴の体なんだ
だから……」


「でも今はあなたなんでしょ?

感覚だって動かす意思だってあなたにある」


「でもすみれちゃんに兄貴が触れたことになるのは嫌なんだ……」


俺の言った言葉に一瞬、驚いたような顔をした彼女は、すぐに複雑な表情を浮かべて言った。


「私は……

体が誰でも構わない

中身があなたなら……

あなたに抱き締められてるって感じられる」


すみれちゃんはそう言いながら、俺にどんどん近づいてきた。


気がついた時にはもう目の前に彼女は立っていて。


「あなたが出来ないなら……

私が抱き締めてあげるから……」


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