あの夏の季節が僕に未来をくれた



ハッとして我に返ると、俺は保健室に立っていた。


(……えっ?)


目の前には養護の先生である弟の彼女が立っている。


(……なんだ?これ)


この感覚……確か前にも味わったような気がする。


目が覚めたのではなく、我に返ったというこの感じ……


(そうだ!あの日、佐伯に初めて話しかけられた日!)


あの時も、俺は自分の状況がまったくわからなかった。


佐伯に説明されてもなお、思い出せずに悩んだ日々。


だけどこないだの休み時間の短い間とは違う。


俺は昨日、自分のベッドで眠りについた。そこから全く記憶がない。


朝、起きて制服を着て……


自転車には乗ったんだろうか?


とにかく学校にまで来て、この保健室に辿り着いてる。


夢遊病者――


ふとそんな単語が頭に浮かんだ。


なんとなく腑に落ちなかった今までの出来事も、寝ている間に勝手に動き回ってるんだとしたら……


辻褄が合う!


無意識に養護の先生である彼女に相談しに来たのかもしれない。


だとしたら、この状況も納得できる。


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