あの夏の季節が僕に未来をくれた
朝に出されるだし巻き玉子なんて、レア中のレアだ。


だから……


いくら別の人格とはいえ、例え弟になりたかったとしても。


きっとそこまで忠実には出来ないだろうと思う。


母が見抜いた俺の体から覗く弟の顔は、きっと本物だったのかもしれない。


そう思えばもしかしたら。


今日、保健室にいたのだって説明がつく。


あいつは先生に会いに行ったんだ。


俺の体を乗っとって、会いに行かなきゃならないほど、先生に伝えたいことがあったんだろうか?


勝手に死んでいったくせに、都合が良すぎるだろと、俺は思った。


だけど、もしそうなんだとしたら、今まで府に落ちなかった出来事も、うまくピースがはまったかのようにしっくりくる。


「もし……もしも本当にそうだったとしたら……

あいつはまだこの世に未練があるってことなのかな?」


俺はそう誰に言うでもなく、何の気なしに呟いた。


以前、一度だけ弟の声を聞いたことがある。


あの日聞いた声は、それ以来一度も聞いていない。


だけど……あれから俺の奇妙な行動は始まったような気がする。


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