あの夏の季節が僕に未来をくれた
俺が黙っているのを、信じられないからだと思ったらしい母は。


あいつが俺のために動いてたとしてもおかしくないんだと当たり前のように言った。


それだけあいつのことを、良くわかってるんだということを見せつけられて。


俺の胸はまたチクリと傷む。


だけど先生の存在を知らない母が、ただ純粋にあいつが家族のために上に上がれないでいるんだと思ったとしても仕方のないことだ。


それに、そんな母の知らない事実を俺は知っているんだと思うことで、さっきの胸の傷みは少しだけ相殺される。


相変わらずひねくれた考えに、自分で自分が嫌になったけど。


もう今ではそんな俺も自分なんだと受け入れることが出来た。


人間、そんなに善意ばかりのやつなんか、いるわけない。


あいつだって死んでしまったから美化されてるけど。


黒い思いだってあったに違いないんだ。


表面だけの付き合いで、深くはならなかった友達だって。


体だけが目的で付き合ってた彼女たちだって。


心配かけてるからいい子にしなくちゃって必死に接してた両親だって。


あいつの本当の姿なんか知りはしないんだ。


< 196 / 248 >

この作品をシェア

pagetop