あの夏の季節が僕に未来をくれた
全部全部偽善の関係だったなんて誰も思ってないだろうけど。


俺は知ってる。


だからこそ、自分を素直に出せる先生の存在が大事だったってこと。


自分の辛い思いや、やりきれない思いを、先生にはぶつけてたってこと。


先生は言ってた。


あいつが学校にもっと行きたかったんだって……


部活も、もっともっとやりたかったんだって……


泣きながらそう言った先生の姿を思い出した。


あの時は自分の気持ちが拒絶されたことばかりに傷付いて、深くは考えなかったけど。


あいつは先生にだけは弱音を吐いていたんだ。


俺は自分のことより、いつの間にかあいつと先生のことばかり考えていることにハッとなる。


目の前で置いてきぼりにされた母が、いまだ俺が気にしてるんじゃないかと顔色を窺っていた。


俺は慌てて冷めてしまったジンジャーティーを口に含んだ。


思わず顔をしかめた俺を見て、母が無言で立ち上がる。


同時に俺のカップを手に取り、温かいものを入れ直してくれるんだとわかった。


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