あの夏の季節が僕に未来をくれた
「ありがと……」


そう礼を言ってから、少し考えてもう一度声をかける。


「母さんの言いたいことはわかったから……

俺は……病気じゃないってことも」


それだけで、母は俺の言わんとしてることを察してくれたらしい。


弟が俺の体を借りて動いているらしいことを、認めたってことに。


それは全部俺のため、家族のためなんだってことも、納得したと母は思っているんだろう。


だけど俺はそれは違うと思ってた。


それをいちいち母に言わないのは、少なくとも半分くらいはもしかしたら俺のためなのかもしれないと思ったからだ。


悔しいけれど、そのおかげで俺は、佐伯と友達になれたわけだし、父さんとのわだかまりもなくなっている。


あいつの俺への最期のプレゼントなんだとしたら。


俺はあいつに何をしてやれるんだろう?


母の入れ直してくれた温かいジンジャーティーを飲みながら、俺は不思議と穏やかな気持ちになっていた。


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