あの夏の季節が僕に未来をくれた
(これって……)


そこにあったのは、ずいぶん前にすみれちゃんに送った俺からのメールだった。


何度も何度も読み返しながら、彼女は悲しそうに微笑む。


俺の残したメールが、彼女をまだ縛り付けてるんだと思った。


あの頃、自分の思いをただふつけてただけのメールに……


次の瞬間、すみれちゃんがゆっくりと立ち上がった。


それから何かを決心したような面持ちで、天井を仰ぐ。


そんな彼女の行動を不思議に思いながら、その様子を見守った。


(いったい何してるんだろう?)


そう思ったと同時に、突然彼女は口を開いた。


「ねぇ、その辺にいるんでしょう?

お兄ちゃんの体から抜け出して、またその辺で私を見てるんでしょう?

いるなら聞いて?

あなたの言いたいことはわかったから……

今度は私にも言わせて欲しい

あなたばっかり言いたいこと言って消えるなんてズルいよ……

私だって…伝えたいことあるんだから……」


すみれちゃんは、どこにいるかもわからない俺の姿を求めて、そう話しかける。


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