あの夏の季節が僕に未来をくれた
これでいいんだ。


これでいい……


わかってる。


自分がもうすみれちゃんに出来ることは何もないんだって。


いつまでもこの世に残ってるわけにはいかないことも。


すみれちゃんは、俺が思ってるより、ちゃんと大人で。


俺は自分で思ってるよりもずっと子供だったってことも……


はっきりとバイバイって言われたことで、それを思い知った。


そう……すみれちゃんは自分の思いを押し込めて、俺がちゃんと上に行けるようにしてくれただけ。


それがわかるから余計に苦しかった。


ここに留まれる最後の時まで、彼女の傍にいたいなんて。


それは俺のエゴだ。


彼女のためを思うなら、とっとと上に上がればいい話なんだから。


いろんな理由をつけて、彼女の傍にいたかったのは俺。


兄貴のためだとか、家族のためだとかいいながら。


もう少しだけ母さんや父さんと話したかっただけ。


兄貴にだって傍に俺を感じてもらいたかっただけなんだ。


ははっ……今、わかった。


神様が俺を上にあげてくれない理由を。


留まらせて俺に悟らせたかった理由を。


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